翔びくらげの仏教入門_戒名編_第4回真言宗｜密教思想が込められた戒名の考え方

仏教の戒名は、宗派ごとに意味や位置づけが大きく異なります。
第4回では、日本仏教の中でも独自の世界観を持つ真言宗の戒名について解説します。

真言宗は「密教」と呼ばれる教えを基盤としており、その思想は戒名にも深く反映されています。
一見すると難解に感じられる真言宗の戒名ですが、その背景を知ると、非常に体系的で意味のある名前であることが分かります。

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真言宗とはどのような宗派か

真言宗は、平安時代に空海（弘法大師）によって日本に伝えられた仏教宗派です。
中国・唐で密教を学んだ空海は、「言葉（真言）・印（手の形）・観想（心）」を用いる修行によって、
この身のままで仏になることができると説きました。

これを即身成仏（そくしんじょうぶつ）といいます。

真言宗では、悟りは遠い未来の話ではなく、正しい教えと修行によって、誰もがこの世界で仏の境地に近づけると考えます。

現在、真言宗のお寺でよく見かけるのは、新儀派に属する「智山派」「豊山派」といった名称です。

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真言宗における戒名の基本的な意味

真言宗の戒名は、単に「仏弟子となった証」というだけではありません。
それは、仏の世界と結ばれた存在となったことを示す名前でもあります。

密教では、仏と人とは本来同じ存在であり、正しい教えによってその真実に目覚めると考えます。
戒名は、その目覚めの第一歩、あるいは完成を象徴するものと位置づけられています。

そのため真言宗の戒名には、仏の徳や智慧を表す漢字が多く用いられます。

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真言宗と「戒」の考え方

真言宗でも「戒」は重要ですが、単なる禁止事項ではありません。
戒とは、仏の世界と調和して生きるための規範であり、修行を支える基盤です。

戒名を授かることは、
「仏の教えに身を委ね、仏の道を歩む存在となった」
という意味を持ちます。

ここには、禅宗のような厳しい坐禅修行とも、浄土系宗派の他力信仰とも異なる、
密教ならではの包括的な世界観が表れています。

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真言宗の戒名の構成と特徴

真言宗の戒名は、一般的に次のような構成を持ちます。

• 院号
• 道号
• 戒名（二字名）
• 位号

構成自体は他宗派と似ていますが、
真言宗では特に「道号」や「戒名」に、密教的な意味を持つ文字が選ばれることが多いのが特徴です。

たとえば、

• 智
• 覚
• 光
• 明
  といった文字は、仏の智慧や悟りを象徴しています。

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戒名と即身成仏の思想

真言宗の戒名を理解するうえで欠かせないのが、即身成仏の考え方です。
即身成仏とは、「この身このままで仏となる」という思想です。

亡くなった後に戒名を授かることは、
「死後に初めて仏となる」という意味ではなく、
生前から続いていた仏への歩みが、ここで一つの形を取った
と考えられます。

戒名は、人生そのものを修行として生きた証とも言えるでしょう。

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他宗派との違いが見える戒名観

これまで取り上げてきた宗派と比べると、真言宗の戒名には次のような特徴があります。

• 浄土真宗：戒名ではなく法名、阿弥陀仏の救いが中心
• 浄土宗：念仏を軸に、仏弟子としての戒名
• 曹洞宗：修行と坐禅の完成としての戒名
• 真言宗：密教思想に基づく、仏と一体となる名前

戒名の違いは、そのまま宗派ごとの「仏とは何か」「人はどう生きるのか」という考え方の違いを映し出しています。

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真言宗の戒名が遺族にもたらす意味

真言宗の戒名は、故人のためだけのものではありません。
遺族にとっても、
「この人は仏の智慧と結ばれ、安らかな境地へと向かった」
という安心感を与えてくれます。

難解に見える漢字や構成も、その背景を知ることで、深い祈りと意味を持つ名前であることが理解できるでしょう。

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まとめ｜真言宗の戒名に込められた世界観

真言宗の戒名は、

• 密教思想
• 即身成仏
• 仏と人との一体性

これらを象徴する、非常に思想性の高い名前です。

戒名を通して真言宗を知ることは、
日本仏教の奥深さと、多様な死生観に触れることでもあります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。