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翔びくらげの仏教入門_戒名編_第3回、曹洞宗|坐禅と修行に基づく戒名の考え方

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曹洞宗 寺院

仏教の葬儀で授けられる「戒名」は、宗派によってその意味合いや考え方が異なります。
これまで第1回では浄土真宗、第2回では浄土宗について解説してきましたが、第3回では曹洞宗における戒名の考え方を取り上げます。

曹洞宗は、日本仏教の中でも「坐禅」を重んじる宗派として知られています。その修行観は、戒名の意味にも色濃く反映されています。素人の方にもわかるよう、順を追って見ていきましょう。


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曹洞宗とはどのような宗派か

道元

道元(どうげん)
日本仏教における曹洞宗は鎌倉時代に始まる。元々天台宗の僧侶であった道元は、臨済宗黄龍派の明全に随身した後、共に宋に渡り、天童山で曹洞宗の天童如浄(長翁如浄)に師事して開悟(身心脱落)して修行が終わり、1227年に帰国した。

曹洞宗は、鎌倉時代に道元禅師によって中国から伝えられた禅宗の一派です。
「只管打坐(しかんたざ)」と呼ばれる、ただひたすら坐禅を行う修行を中心とし、日常生活そのものが修行であるという考え方を大切にしています。

曹洞宗では、悟りとは特別な境地に突然到達するものではなく、日々の修行の積み重ねの中にすでに仏の道があると説かれます。この思想は、生前だけでなく、死後の扱いにも深く関わっています。


曹洞宗における戒名の基本的な意味

曹洞宗では、戒名は「仏弟子としての名前」と考えられています。
亡くなった後に新たな名前を授かることで、その人が仏の弟子として生き、修行を完成させていく存在であることを示します。

この点で、戒名は単なる死後の称号ではありません。
生前の修行の延長として、亡くなった後も仏の道を歩み続ける――それを象徴するものが曹洞宗の戒名なのです。


戒名と「戒」を重んじる考え方

曹洞宗の戒名を理解するうえで欠かせないのが、「戒(かい)」の存在です。
戒とは、仏弟子として守るべき生活の指針であり、修行の土台となるものです。

曹洞宗では、戒を守り、坐禅を行い、日々を丁寧に生きることそのものが悟りであると考えます。そのため戒名には、戒を授かり仏弟子として正式に認められたという意味合いが強く込められています。

亡くなった後に戒名を授かることは、「仏の教えに帰依し、修行の道に入った存在である」と示す儀式でもあるのです。


曹洞宗の戒名の構成

曹洞宗の戒名は、一般的に以下のような要素で構成されます。

  • 院号(付く場合)
  • 道号
  • 戒名(二字名)
  • 位号

この構成は他宗派とも共通点がありますが、曹洞宗では特に「修行者としての姿勢」を重視した文字が選ばれることが多いとされています。

華美な表現よりも、清らかさや誠実さ、静けさを感じさせる文字が選ばれる傾向にあるのも、曹洞宗らしい特徴です。


戒名は修行の完成を表すもの

曹洞宗では、人は亡くなった瞬間にすべてが終わるのではなく、生と死を通して修行が貫かれていると考えます。

戒名は、その人が生涯を通じて仏道を歩んだ証であり、同時に修行の完成を象徴する名前でもあります。
たとえ生前に熱心な坐禅修行をしていなかったとしても、戒名を授かることで仏弟子としての道に正式に入ったとされます。

ここに、曹洞宗の「誰もが仏の道を歩む存在である」という平等な思想を見ることができます。


浄土系宗派との違い

浄土真宗浄土宗では、阿弥陀仏の救いによって往生が約束されるという考え方が中心にあります。
一方、曹洞宗では特定の仏の力にすがるというより、自らの修行と実践を重んじる姿勢が基本です。

そのため、戒名も「救われた証」というよりは、「仏道を生きる者としての名前」という性格が強くなっています。
この違いを知ることで、宗派ごとの死生観の違いも見えてきます。


戒名に込められた家族への意味

戒名は、亡くなった本人のためだけのものではありません。
残された家族にとっても、「この人は仏弟子として静かに安らぎの道を歩んでいる」という心の拠り所になります。

曹洞宗の戒名は、派手さはありませんが、落ち着きと静寂の中に深い意味をたたえています。それは、悲しみの中にある遺族の心を、そっと整える役割も果たしているのです。


まとめ|曹洞宗の戒名が示すもの

曹洞宗の戒名は、

  • 坐禅と修行を重んじる教え
  • 戒を守り仏弟子として生きる姿勢
  • 生と死を貫く仏道の歩み

これらを象徴する名前です。

戒名を知ることは、単に葬儀の知識を得ることではありません。
それぞれの宗派がどのように生き、どのように死を受け止めてきたのか――その精神に触れることでもあります。

翔びくらげ
翔びくらげ

次回は、さらに異なる戒名観を持つ宗派について解説していく予定です。宗派ごとの違いを知りながら、日本人の死生観をあらためて見つめてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考文献】

「曹洞宗」2025年11月16日 (日) 02:29『ウィキペディア日本語版』
「正法眼蔵」2025年8月22日 (金) 13:10 『ウィキペディア日本語版』
曹洞宗SOTOZEN-NET 公式サイト
瓜生中 よくわかる曹洞宗 角川
瓜生中 仏教と葬儀・戒名の事典 学研

第1回:浄土真宗|戒名ではなく「法名」と呼ばれる理由
第2回:浄土宗|阿弥陀仏の救いに基づく戒名の考え方
第4回:真言宗|密教思想が込められた戒名

執筆中です。ご期待ください!

第5回:日蓮宗|信仰を表す法号としての戒名

執筆中です。ご期待ください!

第6回:臨済宗|禅の精神が息づく戒名

執筆中です。ご期待ください!

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