一年のうちで最も昼が短く、夜が長い日——それが「冬至(とうじ)」です。
冬至を境に日照時間が少しずつ長くなり、古くから「太陽が生まれ変わる日」として、新しい年の始まりを意味する大切な節目とされてきました。
この冬至の日に、日本ではゆずを浮かべたお風呂「ゆず湯」に入る習慣があります。
なぜ人々は寒い冬の日に、わざわざゆずをお風呂に入れるようになったのでしょうか。
今回は、その由来や意味、そして現代に続くゆず湯の魅力についてご紹介します。
◆ 冬至の意味と昔の人の知恵

冬至は二十四節気のひとつで、太陽の力が最も弱まる日です。
昔の人々はこの日を「生命の再生の日」と考え、無病息災を祈る風習を行いました。
南瓜(かぼちゃ)を食べたり、「ん」が付く食べ物(なんきん、れんこん、にんじんなど)を食べると運が上がると信じられていたのも、冬至の風習のひとつです。
その中でも、体を清めて新しい季節を迎える意味を持つのが「ゆず湯」でした。
ゆずの香りに包まれながら入浴することで、身も心も新しい年に向けてリセットする――そんな日本人の感性が感じられます。
◆ ゆず湯の由来と語呂合わせ

「ゆず湯」の習慣が生まれたのは、江戸時代といわれています。
銭湯で冬至の日にゆず湯を提供したことから広まったとされていますが、もともとは「禊(みそぎ)」の意味があったとも言われます。
また、「ゆず(柚)」には語呂合わせによる縁起もあります。
「ゆず」は「融通(ゆうずう)」に通じ、「湯治(とうじ)」は「冬至」と同音。
つまり「融通が利くように」「病を治す冬至」との願いを込めた、日本人らしい言葉遊びの文化が根底にあるのです。
◆ ゆずの香りと効能
ゆずの皮には、リモネンやシトラールといった精油成分が多く含まれています。
これらには血行促進や冷え性の改善、リラックス効果があるとされ、寒い季節にはぴったりです。
また、ゆずの香りには副交感神経を優位にする作用があり、心を落ち着かせる効果も期待できます。
ゆず湯に入ると体が芯から温まり、ゆったりとした気持ちで冬を過ごすことができます。
◆ ゆず湯の楽しみ方と注意点
ゆず湯を楽しむには、まるごとゆずをお風呂に浮かべるのが定番です。
皮をむいたり、半分に切ったりすると香りがより強くなりますが、果汁が肌にしみる場合もあるので注意しましょう。
ネットや布袋に入れて使うと後片付けも簡単です。
また、使うゆずは少し古くなったものでも大丈夫。
収穫から時間がたって香りが落ち着いたゆずを使う家庭も多いようです。
◆ ゆず湯に込められた祈り
ゆず湯は単なる「お風呂の香りづけ」ではなく、
「身を清め、新しい季節を健やかに迎える」ための日本古来の祈りの形です。
現代では忙しさの中で季節の節目を意識する機会が減っていますが、
冬至の日にゆず湯に浸かることで、古くから続く日本人の知恵や願いに思いを馳せてみるのも素敵ですね。
◆ まとめ
- 冬至は「太陽が生まれ変わる日」とされる節目の日
- ゆず湯には「融通が利く」「病を治す」などの語呂合わせの縁起がある
- ゆずの香りには血行促進・リラックス効果がある
- ゆず湯は無病息災と新たな季節への祈りを込めた風習
寒い冬の日、香り豊かなゆず湯に浸かりながら、
日本人の季節を大切にする心を感じてみてはいかがでしょうか。

2025年は12月22日です。湯船にゆずを入れて、ゆず湯を楽しんでみませんか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
日本風俗史事典 弘文堂
国立国会図書館 & 民俗資料データベース 解説「冬至の日に柚子湯に入るようになったのはいつ頃からか」
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