2000戸を超えるマンションの施工・企画設計・品質管理・アフター対応までマンション供給の総てを知る、技術屋の独り言!!
現在の建設業界は、技術者や熟練作業員が少ない
現在、不動産・住宅産業は、深刻な人手不足が生じているなかで、建設資機材の高騰。作業員不足や天候不良で工事が遅れがちとなり、そして、VEという名ばかりのコストダウン。立て続けに生じる事故や工事災害。
建設現場を取り巻く現状は非常に厳しい状態です。
建設業界において、技術者不足が深刻な問題となっています。労働人口の減少や高齢化、若い世代の建設業界離れなどが原因とされています。
以下は、建設業界における技術者不足の要因と対策についての詳細です
- 労働人口の減少 現代の日本では、労働人口が減少しており、建設業界もその影響を受けてる。
この傾向は今後も続くと予測されている。 - 給与水準の低さ 建設業界の給与が他の産業に比べて低いことが、新規雇用の減少につながっている。
給与改善策が求められている。 - 需要拡大 建設業界の需要が増加しているため、技術者の需要も高まっている。
しかし、その需要に対して十分な技術者が確保できていない状況である。
1986年(昭和61年)日本はバブル期に入り、建設ラッシュが始まり、建設作業員が大幅に不足します。
水道橋の東京ドーム球場の建設が始まると、更に作業員が不足し、大手ゼネコンはお金をバラマキ作業員を集めました。
そして、1997年(平成9年)バブルが弾け、大手ゼネコンなどが倒産し始めると、建設業は冬の時代を迎えます。
建設投資が大きく減り、多くの技術者、建設作業員は、建設工事の仕事を失い、渋々違う職種へ移っていきました。
2015年(平成27年)頃より再び建設投資が増加し、建設工事が増加しますが、建設業の就業者は増加していないため現在、建設業では常時人員不足となっています。
建設業を取り巻く問題
建設業が抱える大きな課題として、以下の4つが挙げられます。
2024年問題
2024年4月1日より改革関連法による改正後の労働基準法により法定化されました。
そのため、時間外労働に対して罰則付きの上限規制が設けられ、残業で工事をすることが難しくなりました。
長時間労働を改善することで、建設業に従事する人を増やそうとする試みですが、建設業で働く作業員の多くは請負工事により、頑張った分報酬が得られましたが、働く時間が少くなった分、報酬が減る可能性が考えられます。
今回の労働時間の規制により、人手不足問題がより深刻になることが予想されます。
そして建設工事は、工期が延長され、その負担は発注者へ、そして住宅購入者への負担となります。
資材の高騰
現在、早期根本的な対策が望まれる地球温暖化の影響で、世界各地の森林の生育が不安定となり木材が不足するとともに、日本で使われる木材は、約7割近くを輸入に頼っています。燃料価格の高騰は輸送コストを押し上げ、更に木材の価格に反映されています。最近、イランの情勢が気になるところですが、もしイランとイスラエルの争いが激化しホルムズ海峡が閉鎖された場合、さらなる燃料価格が高騰し、燃料の使用、建設資材の運搬、そして建設資機材の製造と総ての価格が高騰することが予想されます。
更に、円高が続く現在、多くの資源を輸入に 頼らざるを得ない日本にとって厳しいものです。このまま円高が続くと、今後さらなる資材の値上げにつながり、建設業界に大きな打撃を与える可能性があります。
引用元:建設物価調査会 総合研究所 令和6年4月1日発表より
賃金の低さ
建設業は、発注者から工事を元請けが請負▶1次下請け▶2次下請けと工事の発注が流れます。
そのため、2次、3次と工事金額から利益が差し引かれ発注され、だんだん取り分が少なくなるため、実際に専門工事業者として作業している作業員は賃金が安くなります。また日給制で働く作業員の場合、天候不良により作業できない日があれば給与もその分少なくなってしまうこともあります。
また、建設業は身体を使う重労働であることから、賃金のピークも50歳程度で来てしまうため、若い人から敬遠されてしまう傾向もあります。
古い習慣
建設業には、旧態依然の考え方が根付いている人が多く存在しています。
現在、多くのゼネコンでDX戦略と称する、デジタル化を進めています。若い人は飲み込みも早く活用していけると思いますが、その戦略を牛耳っているDXリーダー、役職者が高年齢のため、デジタル化の本質がわからず、アナログ的なことから抜け出せず、Excelに集計したデータを関数やピポットテーブルなどで集計すれば良いものを「手計算で集計しろ」など、チグハグな指示を出しているのが現状です。
現在日本の企業でのDXは9割が成果が出ていないか、失敗していると言われています。
本当のDXは、知ったかぶり、フリだけのアナログ人が若者にバトンを渡した後に、本当のDX化が到来すると考えています。
経験不足の監督と技術力のない作業員が造った建物は!?
現在、住宅を作る業界は総て経験不足の人材が中心に関わっています。
設計者も、大学卒業後数年の経験しかないスタッフも多く、私も住宅購入者から「この家の設計者は料理を作ったことのない人が設計した」とご指摘を受け、設計者に確認した所、入社2年目の独身男性が設計していました。
図面をチェックした設計主任も経験10年の独身男性で、この二人は殆ど自分で調理をしたことが無い人でした。
最近では、デベロッパーや設計部内に女性社員の専属チームを配置し、女性目線でキッチンや収納など設計企画する会社も増えてきましたが、建設会社や不動産会社ではまだ男性が主体の体育会系の会社も多く残っています。
また、現場でも数年の現場経験しかない見習い監督、工事を行う作業員も年配者や専門工事の経験が少ない作業員が多く工事に従事しています。
若手社員を指導育成する中堅社員は少なく、彼らも通常の業務で精一杯であり、若手社員の面倒を見ることが出来ません。
折角大手ゼネコンに入社したものの、目標を見失い、退職していく社員も多くいるのがとても残念です。
これらのように、建築工事において、技術者や技能工不足が大きな問題になっています。
建築工事には
設計者 ▶ 現場監督 ▶ 作業員 ▶ 現場監督 ▶ 監理者 ▶ 第三者検査 ▶ 施主(購入者)
上記のプロセスで施工、管理の運営で建物を築いて行くものですが、いずれの部門で、経験不足の担当が、不具合を見落としてしまい、最悪の場合、途中で不具合が見つからず、最後の施主(購入者)に建物が渡ってしまう恐れもあります。
多発する新築現場での不具合
多発する大手ゼネコンの不具合が生じた建設現場 引用元:日経クロステックHPより
建築工事の流れにおいて、途中のプロセスで、不具合が確認され、不具合の生じた部分を壊して作り直すという不具合が多発しています。
2015年10月、三井不動産レジデンシャルが販売した「パークシティLaLa横浜」(横浜市)で、マンションを支える基礎杭が支持層(マンションを支える固い地盤)に達していないことや、施工データの改ざんが発覚した。
その後の調査で、建物を支える基礎となる杭473本のうち、8本が必要な深さまで打たれておらず、重複を除く70本の施工データが改ざんされていたことが判明。こうした改ざんは全4棟のマンションのうち3棟に及んでいた。
引用元:東洋経済オンライン 「横浜傾きマンション」、泥沼法廷闘争の行方 より
上の記事は、残念ながら不具合が発覚せず、引き渡しがされてしまったマンションです。
2007年11月に竣工し、約8年後の2015年10月に不具合が発覚しました。
このマンションは、販売会社、施工したゼネコン、実際に杭を施工した業者が大手であったため、不具合のあったマンションを総て解体し、建て直すことになりました。
いずれにせよ、居住者は、金銭的な損害を負うことはありませんでしたが、不具合発覚後の調査や、説明会などの出席など多大の時間負担、そして仮住まいの引っ越しと大きな負担がかってしまいました。
この問題は、氷山の一角であり、販売会社や施工会社などが小さな会社であった場合、不具合発覚後、会社が倒産してしまい、建て直しなどの要求も出来ず、購入者の泣き寝入りしてしまうことが考えられます。
少子化により住宅は過剰供給
現在、マンションの販売価格が2013年より著しく高騰しています。
マンションの価格が高騰している要因は、今まで記載してきた、建築資材の高騰、人件費の高騰、そして以下の事も考えられます。
・都内の一等地に建つ建物が老朽化により高額のタワーマンションに建替えられている。
・地価の上昇
・テレワークなど働く環境が激変して都心から郊外へ
・投資物件としての外国人の需要増加
まとめ
今まで説明してきた理由により、私はこの5年間に施工された物件や現在、または数年中に建設が予定されている物件(マンション、戸建住宅)はオススメしません。
築10年程度経過し、不具合等の問題が生じていないマンションや戸建てをオススメします。
住宅は今まで一生に一度の買い物、真剣に選びましょうといった話がありましたが。
これからは、住宅を購入して、その土地に生涯暮らす人生から、賃貸住宅(中古住宅の購入)で時々引っ越しする生活スタイルに変わっていくと考えています。
今回の記事は、跳びくらげの経験による主観的な意見を記事にまとめたものです。
実際に住宅の購入を考えられている方の参考としてお読み頂き、参考になれば嬉しいです。